第4回 効率的勉強のための情報3分法

第4回 効率的勉強のための情報3分法
OUTPUTがINPUTを生かす
葉玉 匡美 【プロフィール】
教養 インプット 情報 勉強
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 忘却は、恥ずべきことだろうか?

 確かに、もの忘れを指摘されると、ちょっと恥ずかしい。「自分も年かな」と言い訳したくなる。

 しかし、老若男女・天才凡才を問わず、誰でも時が経てば記憶は薄れる。とりわけ、新しい情報を次々とINPUTしている人は、古い情報をどんどん忘れていく。それは、新しい恋をすれば、失恋の苦しみが薄れるのと同じ原理である。

 緊急性の低い情報がいつまでも頭の表面にあると、情報量が増え過ぎて処理速度が遅くなる。だから、人間は、古い情報を忘れることで、現在の処理効率を上げるように設計されている。

 忘却を恥じてはならない。むしろ忘却することの大切さを意識してほしい。

 前回述べたように、勉強で一番大事なことは、INPUTした情報を定着させ自由自在に使いこなせるようになることである。そして、そのためには、必要最小限の情報を暗記しなければならないこともある。

 定着や暗記を効率的に行うためには、情報の絞り込みが不可欠であり、重要性の低い情報を忘却する必要がある。散らかった部屋に新しい家具を入れるためには、まず粗大ゴミを捨てなければならない。忘却は、知能の安全弁なのである。


情報3分法とは何か

 では、どうやって「定着させる情報」「暗記する情報」「忘却する情報」を区別すればよいのだろうか。

 情報を区別すると言うと、「INPUTされた情報を分類して赤・白・青のラベルを張る」という作業をしたくなる人がいるが、私はグータラなので、そういう作業はしない。
分類作業を要求する勉強術は、すぐに破綻する。なぜなら、INPUTしたばかりの情報の重要性を見抜くことは至難の業だからである。明確な基準がないまま分類を始めれば、迷ってばかりで時空を浪費するだけだ。

 では、どうするか。

 私は、情報の重要性を測るモノサシは、情報を実際に使用して課題を処理すること(OUTPUT)以外にないと確信している。OUTPUTをモノサシにして「定着させる情報」「暗記する情報」「忘却する情報」の3種に分類するのが、脱時空勉強術の情報3分法である。


定着させる情報の見極め方

 情報3分法のファーストステップは、課題の処理を通じて「定着させる情報」が何かを見極めることである。

 難しいことではない。仕事に必要な知識を身につけたければ仕事をする。英語を話せるようになりたければ英語で話してみる。試験に合格したければ、その試験と同じ形式の問題を解いてみる。身近に指導者がいてOJT(職場内訓練)をしてくれるのがベストだが、そうでなくても、OUTPUTを沢山することで、定着が必要な情報は、自然と定着する。だから、意識的に何かを記憶しようと努力する必要はない。

 定着とは、言葉で表現できない記憶である。

 ワープロを打つ、ピアノを弾く。趣味でも勉強でも、仕事でも、最初は教えてもらったことを思い出しながらやるから、四苦八苦して進まないが、毎日、課題をこなしていると、技能として定着する。

 定着した情報は、言葉で表現できる単発の情報ではなく、情報と情報の繋がりであり、流れ(技能)である。流れは言葉にするのが難しい。しかし、定着した情報は、流れで記憶しているから、少々イレギュラーなことが起こっても、流れに従って自在に対応できる。

世間では、INPUTに時空を割く人が勉強家のように見られるが、言葉で覚えようとしているうちは使い物にならない。INPUT以上にOUTPUTに力を入れることにより、様々な情報を処理する流れが身につくのである。


暗記の対象の絞り方

 情報3分法のセカンドステップは、暗記すべき情報を2×4(ツーバイフォー)の記憶喚起によって暗記することである。

 暗記は、言葉で表現できる単発の情報である。定着は、暗記した情報等を利用して問題を解決する技能である。例えば、数学の公式は暗記の対象であるが、その公式を利用して実際の問題を解決する能力は、技能である。2次方程式を解くという課題が与えられた時、最初は、解の公式を暗記し、それを課題に当てはめて解くが、沢山問題をこなしていくうち、公式のことを意識せずに、解を計算できるようになる。そうなれば、知識が定着し、技能として身についたと言うことができる。

 このように暗記は、情報を定着させるための出発点であり、きっかけである。したがって、暗記をすべき情報は、最終的に「定着」につながるもの、定着のために必要なものに限定しなければならない。

暗記の対象が増えれば増えるだけ、2×4が難しくなるから、次の情報は切り捨てる。

(1)定着のために行うOUTPUTと無関係な情報、例えば、小説のようにINPUTを楽しめればいいような情報は、真っ先に暗記の対象から切り捨てる。

(2)「念のために覚えようかな」と感じた情報も暗記しない。将来OUTPUTに使うかどうか不明な情報まで暗記の対象としたら、裾野があっという間に広がって、オーバーフローを起こしてしまう。

(3)誰かに尋ねられた時、調査して答えればよい情報も、検索方法だけ知っていればよい。細かい専門的知識やスケジュール等も、検索できれば十分である。

(4)定着した情報も、暗記の対象から外す。覚えたものは、覚えなくてよい。3回チェックして間違わないのならば、即座に外す。

 結局、暗記すべき情報は、「OUTPUTしてみて、覚えていなかったものや間違ったもの」である。情報を暗記してからOUTPUTするのではない。まずOUTPUTしてから、暗記の対象を絞るのである。

 例えば、教科書をいきなり暗記しようとしてはならない。教科書を読んだら、すぐに問題集を解き、間違ったところのみを暗記する。最初にスクリーニングをするから、暗記すべき情報量が少ない。さらに、そこだけ2×4をやり、定着したら即座に暗記の対象から外す。だから、1週間も経たずに、暗記の対象はグッと減る。情報量が減れば暗記が楽になるし、時空も節約できる。


忘却すべき情報の見分け方

 「暗記しないことで暗記する」というセカンドステップが終われば、それ以上、特にやることはない。「定着させる情報」でも「暗記する情報」でもない情報。その他大勢の情報が、「忘却する情報」である。何もやらなければ、不要な情報は自然と忘れてしまう。忘れてしまえば、処理効率が上がる。忘れることの重要性さえ分かっていれば、忘却すべき情報を下手に思い出そうとして、時空の無駄遣いをするようなことはなくなる。


OUTPUTこそ定着と暗記の要

 以上のように情報3分法と言っても、やることは単純である。
(1)情報の意味を理解する・・・・・・・・INPUT
(2)繰り返しOUTPUTして課題処理・・・定着
(3)間違ったところは2×4 ・・・・・・・暗記
(4)それ以外の情報は気にしない・・・・・忘却

 まとめてみると、当たり前のことばかりで愕然とするが、多くの人が、当たり前のことができずに、頓挫してしまう。頓挫する人は、知識を増やそうとして、課題処理のための時空が足りなくなって失敗する。成功する人は、暗記する情報を減らし、課題処理を通じて技能を身につけることを目標とする。目指すところが違えば、似たような道を通っても、最後に行き着くところは違うのである。

 情報3分法は、OUTPUTを重視した情報の絞り込みと定着のための技術。OUTPUTを軸に情報を選別し、同時に定着させるから、時空を節約しながら、有用な情報だけを効率的に定着させることができるのである。 << 1 2

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