種類株式?

剰余金の配当規定(1号)
株式に付される規定の一種で剰余金の配当に関する地位の優劣を定めたもの。

残余財産の分配規定(2号)
株式に付される規定の一種で、会社の清算をした後、残った残余財産の分配に関する地位の優劣を定めたもの。

議決権制限規定(3号)
株式に付される規定の一種で株主総会での議決権の、全部又は一部を制限する事を内容とするもの。
→通常は、配当に対して優先株式である事の代償として、議決権制限がつけられる。こうする事で、株式の流通性を高めると同時に、買収防衛策にもなるからである。

公開会社→議決権制限株式が発行済株式総数の二分の一を超えたときは直ちに発行済株式総数の二分の一以下にする措置を取らなければならないとされている(115条)。
*非公開会社においては、旧有限会社と同一視する傾向から、規制はなし。


譲渡制限規定(4号)
譲渡に関してその会社の承認が必要である旨を一部の株式について定める規定(108条1項)。

株式取得者からの承認の請求(137条)
譲渡の承認→株主総会、または取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議
ただし、定款に別段の定めを設けることが出来る(139条)。
株式会社又は指定買取人による買取り(140条)
売買価格の決定(144条)
相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め(174条)

取得請求権規定(5号)
全部の株式の内容について付す事の出来る取得請求権とほぼ同じであるが、取得対価として、その会社の別の種類株式を設定できるという部分が異なる。この規定を株式発行後に設定する場合、定款変更である事から特別決議を要する事になる。また、新株予約権等と異なり、取得請求権のみを他人に譲渡することはできない事とされている。


取得条項規定(6号)
全部の株式の内容について付す事の出来る取得条項とほぼ同じであるが、取得対価として、その会社の別の種類株式を設定できるという部分が異なる。

全部取得条項規定(7号)
株主総会の決議より、会社がその全部を取得することが出来る定めのある株式である。


拒否権規定(8号)
この規定も上記の譲渡制限と同じく従来(会社法以前)は株式の種類とは位置づけられてなかったが、会社法から種類株式の一種とされた。


役員選任権規定(9号)
株式の株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任する定めのある株式である。委員会設置会社及び公開会社は、発行することができない。


[編集] 法定種類株主総会の排除既定
 株主総会の決議によって、特定の種類株式の株主にだけ不利益を及ぼす恐れがある場合、会社法は、種類株主総会の決議をも要求する。これを法定種類株主総会という。この法定種類株主総会を開く権利を一定の種類株式だけ定款規定で排除することができる。この規定の有無も、広い意味では種類株式の内容と考えられる。ただし、会社法はこのような法定種類株主総会の排除規定が必ずしも種類株式の内容となるとは考えていない。  たとえば、種類株式発行会社がする一定の行為(322条1項2号から13号)が、ある種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該種類の種類株主総会の決議が必要となるが、この場合の法定種類株主総会を排除する規定を定款に設けることができる。(322条2項) そして、この規定は同条で、「株式の内容」であるとされており、911条3項7号で、「株式の内容」とされているものは登記事項となることから、上記の株式の内容の規定と同様に株式会社の登記簿に登記される。しかし、他の法定種類株主総会を排除する規定(199条4項 200条4項 238条4項 239条4項 164条2項など)は、条文中で「株式の内容」とはされておらず、従って登記もされない。  ちなみに、この違いは、ある種類の株主に損害を及ぼす場合の法定種類株主総会を排除する規定のほうが、他の法定種類株主総会の排除既定よりも、株主に強い制限をもたらすものであるためその公示が必要とされることに由来する。また、この趣旨から、322条の定款規定をもってしても、以下の行為(322条1項1号)の際には法定種類株主総会を排除することが出来ない。これらの行為に制限を及ぼすのは種類株主に回復不能な損害を与える可能性があるからである。

322条の法定種類株主総会排除既定をもってしても種類株主総会の決議を排除できないもの
株式の種類の追加
株式の内容の変更
発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加

[編集] 種類株式の設定
定款に定めないとその効力を有しないため、定款変更が必要となり株主総会で特別決議が必要となる(309条2項)。
しかし、種類株式発行会社が任意の発行済種類株式に新たに別の権利内容の規定を設ける場合は、当該種類株主による種類株主総会特別決議を要し、設定する規定によっては、種類株主総会の特殊決議や該当する種類株主全員の同意が必要になる場合もある。


[編集] 条文
会社法108条 異なる種類の株式
1項 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行する事が出来る。但し、委員会設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行する事が出来ない。
1号 剰余金の配当
2号 残余財産の分配
3号 株主総会において議決権を行使する事が出来る事項
4号 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する事
5号 当該種類の株式について、株主が当該会社に対してその取得を請求する事ができる事
6号 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じた事を条件としてこれを取得する事が出来る事
7号 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得する事
8号 株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議の他、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がある事を必要とするもの
9号 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること



2項 株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
1号 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
2号 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容
3号 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項
イ 株主総会において議決権を行使することができる事項
ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件
4号 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
5号 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
6号 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項
イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項
ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
7号 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項
イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法
ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件
8号 株主総会取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項
イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件
9号 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項
イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項
3項 前項の規定にかかわらず、同項各号に定める事項(剰余金の配当について内容の異なる種類の種類株主が配当を受けることができる額その他法務省令で定める事項に限る。)の全部又は一部については、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)の決議によって定める旨を定款で定めることができる。この場合においては、その内容の要綱を定款で定めなければならない。
条文上では漢字になっている箇所あり。8号の括弧書きは省略。

[編集] 種類株式の評価
中嶋克久・野口真人・棟田裕幸共著「種類株式・新株予約権の活用法と会計・税務」(中央経済社)では、市場価格がある種類株式は、市場価格で評価し、市場価格のない種類株式は金融工学を利用した評価モデルによる評価方法を原則すると書かれている。また、例として、普通株式転換オプションがついたプレーンバニラの優先株式(議決権に制限あり、普通株式より配当順位が優先)の評価については、議決権を経済価値とみなして評価するのは実務上困難であり、普通株式普通株式オプションの価値を加算したものとなると記されている。