相続

相続
法律では、『個人の財産的な権利、義務をその死亡により、個人の配偶者や子供などの相続人として法律で決められた者(法定相続人)が包括的に引き継ぐこと』を相続としています。
 相続か贈与か遺贈かによって成立する要件や税金の率や取扱いなどが異なってきます。ここでは、それらを整理して説明していきます。
 
○贈与・遺贈
よくある話で、「命の恩人や、特に恩がある人に自身の財産を譲りたい。」あるいは、「介護をしてくれた近所の方に特定の財産を残したい。」というように、法定の相続人以外の人に財産を譲与したいということがあります。この場合、通常の方法として、贈与と遺贈の2種類があります。
 
 相続と、贈与・遺贈では、不動産を譲り受けた場合、その不動産を登記する際に登録免許税に差ができ、相続による登記のほうが贈与、遺贈に比べて登録免許税率が低くっています。

相続、贈与、遺贈の登録免許税率の違い
 
H18年4月1日〜
相続 0.4%
贈与・遺贈 2.0%



【贈与とは・・・】
 法律では、贈与は『当事者の一方が自己の財産を無償にて相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって成立する。』としています。(民法549条)
 遺贈が一方的な意思表示で、相手方の承諾無しに取消しや変更が可能なのに対し、贈与は、契約の一種とされ、書面で行った場合は、原則として撤回することができないとされています。
 
 
死因贈与
 贈与でも、「私が死んだら、この土地をあげますよ。」というような、贈与する者の死亡を条件とした贈与契約を死因贈与といい、他の贈与とは区別されています。贈与者の死亡が効力発生の条件となる点が遺贈と共通することから、民法では遺贈に関する規定を死因贈与にも準用するとしています。(民法554条)
 
 贈与税相続税より税負担が重く設定されていますが、死因贈与は税金の面でも贈与税ではなく、相続税が課せられます。ただし、不動産取得税はかかりますので、不動産を死因贈与した場合、法定相続人に対しては、通常の相続よりも少し税負担が重くなります。
 
 死因贈与は、相続人以外の第三者に相続財産を譲るということになりますので、本来の相続人からの理解を得れないと、もめ事の原因になり、せっかく遺言により死因贈与の意思表示してもその通りにならないことがあります。このような事態にならない為には、客観的な立場の方に遺言執行者として遺産分割に関わってもらうということが効果的です。遺言執行者には行政書士、弁護士など専門家に依頼するとスムーズに遺産分割が行われます。
 
 
 

 
【遺贈とは・・・】
 相続は、相続人が当然に財産の全てを承継するのに対し、遺贈は、「遺言」によって遺産の全部又は、一部を無償、あるいは、一定の負担を付して相続人以外の他の者に譲与することをいいます。遺贈はもらう側(受遺者)の意思とは関係なく、あげる方の一方的な意思表示、つまり遺言により生じます。ただし、遺留分に関する規定に違反して遺贈はできません。(民法964但書き)
 
万が一、遺言者より先に受遺者が亡くなった場合は、遺贈の効力は生じません。したがって、受遺者に相続人がいたとしても遺贈される地位は相続することはできません。
 
遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。
 
 〈包括遺贈〉
「財産の3分の1をSさんに遺贈します。」というような、財産の全部又は、一定の割合で指定する遺贈のこと。
 
 〈特定遺贈〉
「この土地はSさんに遺贈します。」というような、特定の財産を指定する遺贈のこと。
 
 
 遺贈も死因贈与と同様に、相続人以外の第三者に相続財産を譲るということになりますので、本来の相続人からの理解を得れないと、もめ事の原因になり、せっかく遺言により遺贈の意思表示してもその通りにならないことがあります。このような事態にならない為には、客観的な立場の方に遺言執行者として遺産分割に関わってもらうということが効果的です。遺言執行者には行政書士、弁護士など専門家に依頼するとスムーズに遺産分割が行われます。
 
◆遺贈の放棄
 相続の放棄と同様に遺言により受遺者として指定された者には、それを拒否する権利が認められています。(遺贈の放棄)
 
 遺贈の放棄は包括遺贈と特定遺贈とでは異なり、包括遺贈の放棄は遺言者が亡くなったことを知った日、又は、自分に対して遺贈があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に放棄の申述をします。期間内に放棄の申述をしないと承認したものとみなされます。
 
 一方、特定遺贈の場合は、期間が定められていなくいつでも放棄できます。ただ、いつまでもはっきりしないと、関係者は困りますので、利害関係者等は受遺者に対して期間を定めて承認か放棄かの確認の催告をすることができます。受遺者が期間内に回答しない場合は、承認したものとみなされます。

 
相続・贈与・遺贈のポイント整理
相続 • 人の死亡を原因として、財産が移転する。
• 故人が生前に持っていた財産的な権利、義務を相続人が包括的に引き継ぐ。(財産を特定しての譲渡はできない)
• 法定相続と遺言相続の2種類。(法定相続の場合、贈与や遺贈と異なり、意思表示に基づいて行われるものではない。) 被相続人の死亡を原因とする一方的な財産の移転
贈与 • 当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がそれを承諾することによって成立する契約。
• 書面によらない贈与は、各当事者がいつでも取消せるとされている。(民法550条)ただし、既に履行された部分は取消せない。 当事者間相互の契約
(相続の際の遺留分の制限あり)
死因贈与 • 「私が死んだら、この土地をあげますよ。」というような、贈与する者の死亡を条件とした贈与契約。
• 遺贈に関する規定が準用される。
• 税金の面では贈与税ではなく、相続税扱いとなる。
遺贈 • 遺言によって遺産の全部又は、一部を無償、あるいは、一定の負担を付して他の者に譲与すること
• 包括遺贈と特定遺贈の2種類がある。
• 受遺者は、相続人か否かは問わない。 遺言による一方的な財産の移転
(相続の際の遺留分の制限あり)

遺留分とは・・・】
 相続人が取得することを保証されている分を遺留分といいます。
 日本では、被相続人(故人)が遺書で示した最終意思は法定の相続の規定より尊重されるというのが基本姿勢ですが、被相続人が相続人以外の者、例えば愛人に全財産を与えるという遺書を残した場合、本来の相続人である妻や子供のその後の生活に支障をきたします。そうならない為にも、相続には遺族の生活保障という意味もあるので、全てを被相続人の自由に処分するということは許されていません。
 
 というわけで、民法では、遺言の内容にかかわらず、相続財産の一定割合を一定範囲の相続人に必ず留保されるとしており、被相続人の遺言によってもこれを侵害することはできません。これを遺留分といい、遺留分を得る権利を有する相続人を遺留分権利者といいます。
 
 遺留分権利者の範囲は、配偶者と子(代襲相続人も含む)、直系尊属となっています。なお、兄弟姉妹は、遺留分権利者の範囲に含まれていません。