◆「打たれ強い心」をつくる19のフレーズ

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◆「打たれ強い心」をつくる19のフレーズ◆
長く人生を生きていると、あの時の一言ですごく気が楽になった、やる気になった、あの一言が忘れられないなという言葉がいろいろあります。
そんな中で、今回は「打たれ強い心」をつくる19のフレーズをご紹介します。
仕事、プライベートで困難な壁にぶち当たった時、参考にしてみてください。
きっと、人生が変わります。
これらは、私が禅の師匠や学校時代の先生、いろいろな先輩方、友人から聞いたもの、あるいは忘れられない言葉として今でも私の心に残っている、また、私自身、今、講演や研修で時に応じてよく話しているフレーズです。
① そろそろ本気になろう
人間は、「自分はやればできる」「本当はすごい力を持っている」と思っているものです。
でも、「今日は都合が悪いからやめておこう」「そのうち頑張ろう」というのが大多数です。
たとえば、
「英語をマスターしたい」
「じゃ、今日、英語やりますか」
「いえ、今日はちょっと」
「今週は?」
「今週もちょっと。今のところ予定がありまして」
「今月は?」
「まだ考えていません」
というように、あっという間に一年、二年が過ぎてしまうわけです。
でも、今日から本気になればできるのです。
たとえば、
「英語をマスターしろ」
「あ、僕、英語嫌いなんです」
「そうか。じゃ、明日、絞首刑だ」
と言えば、誰でもマスターしようとするでしょう。
本来は、本気を出せば相当のことができるということです。
ですから、
「そろそろ本気になろうよ。自分ならできるはずだから」
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と自分に言ってやってください。
② 人生は、明るく楽しく元気よく
人生を生き抜く根本的なルールは、「明るく楽しく元気よく」だと思っています。
ネクラで、ひねくれて、いやいや生きるのではなく、仕事でも家庭でも明るく生きるのです。
たとえば、朝起きたら、
「よーし、今日も頑張るぞ!」
と、気合をかけるわけです。家庭が明るくなります。
どんなつらい仕事でも、「これは成果に結びつくんだ。頑張ろう」という気持ちで前向きに取り組めば、負担の思いは必ず希望に変わります。
私は若いころ、アメリカに行きたくて、その資金づくりでキャバレーで働いたことがありました。
昼間は会社に勤め、夜にキャバレーのボーイをするというのは、肉体的にも精神的にも結構つらいことでした。
でも、私は、一年後にアメリカへ留学するという希望がありましたから、どんなにつらくて、先輩や店長に殴られても、やり抜くことができました。
「つらくても、明るく楽しく生きよう」
と思っていると、最終的には店長も私を認めてくれて、
「おまえ、いつも頑張っているな」
とほめられたことがありました。
常に明るく元気よく生きてください。
③ 人は自分の思ったとおりの人間になる
ある時、静岡で研修をやったことがあります。
その時、私に礼状を書いてくれた人がいました。
「先生の研修を受けて目からうろこが落ちました。人は思ったとおりの人間になる、思いが決めるというお話を聞きまして、私は一つの思いを持ちました。それは三年後に弁護士になることです。私は今、静岡の駅に勤めるJRの職員です。でも、自分が思ったとおりになるということを信じて、三年後に弁護士になる決意をしました」
私は正直言って、随分難しい話だなと思いました。
駅員さんが司法試験に合格するということは、なかなか大変ではないかなと思ったので
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す。
ところが、三年後に手紙が来ました。
「先生、覚えていますか。先生との約束どおり、今年、司法試験に合格いたしました」
びっくりしましたね。
「すごい快挙ですね」
私はうれしくて、その礼状に対する返事を書きました。
実は、何年か前に静岡へ行って、その弁護士の先生に会ってきました。
その人は、
「箱田先生に会って人生が変わりました。人は自分の思ったとおりの人間になる。これですね。これを信じてやったおかげでうまくいきました。先生は私の命の恩人です」
と言ってくれました。
いい思いを持って頑張ることが大切です。
④ 今日はこれからの人生の誕生日と思って頑張れ
普通「人生」とは、生まれてから死ぬまでを言います。
しかし、今三〇歳の人は、実は人生が三〇年間終わっているのです。
過去はもう消滅しています。今から過去を変えることはできないのです。
大事なことは今から死ぬまでをどう生きるかです。
その人の人生は今日から死ぬまで、あと五〇年ぐらいは生きるでしょう。
それを人生と言います。
人生というのは、わかりやすく言えば、今日が誕生日なのです。
過去は変えられない。でも、これからの五〇年は変えられるという気持ちで、今日の朝生まれたと思えばいいのです。
私たちは過去にとらわれがちです。
「俺なんか、学歴ないから」
「俺は家が貧しかったから」
「俺は運が悪い。今の上司に嫌われている」
そういうことにこだわってしまいます。
「もう過去はない。今日生まれたのだ」と思えば、嫌いも好きもないのだから、そういうしがらみは何もありません。
ですから、「よし、今日からの人生、立て直しだ」と思って、新たな夢を持って出発すべきです。
よくよく考えると、今日がいっぱい集まったものを人生と言うのです。
だから、「今日が誕生日だ、これからの人生最高にうまくいくよ」と思って頑張ってくだ
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さい。
⑤ 大丈夫、これからどんどんよくなる
これは私がよく色紙に書いて人に贈る言葉です。
私の妻が十数年前、がんになりました。
悪いところの全摘手術を受けました。
その時は、すごくショックを受けました。
元気で明るい妻が、がんで全摘手術を受けるなんて、まさかと思いました。
「もう一度、医者に行って再検査してもらってくれ」
と言ったのですが、間違いなくがんであるということで、手術を受けることになったのです。
当日、私はもちろん会社を休んで病院に詰めました。
息子たちも、アメリカにいる息子を除いて集まってきました。
長い手術でした。病院のベンチにずっと座って待っているわけです。
三時間が過ぎて、病院でアナウンスがありました。
「箱田様のご家族の方、お集まりください」
手術室に集まれということです。
私はドキッとしました。家族みんな集まれということは、もしかしたらまずい結果になったのかなと思ったのです。
手術室の前に行くと、ドアが開いて、執刀医の先生が出てきました。
顔を見てほっとしました。にこにこしていたのです。
「ああ、よかった。助かったんだ」と思いました。
案の定、先生が、
「箱田さんのご主人ですか。手術は成功しました」
「ありがとうございます」
と心から言いました。
それから二週間ぐらい、妻は入院していました。
私はもちろん、フルーツや週刊誌やお菓子を持って毎日見舞いに行きました。
そうしたら、妻がある時、
「明日来る時、持ってきてもらいたいものがあるの」
「何?」
「あなたの色紙よ」
「どんなやつ?」
「『大丈夫、これからどんどんよくなる』、あれ一番ぴったりだと思いませんか」
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「そうだね」
ということで、私はその晩、一生懸命墨をすって色紙を書きました。
額に入れて、次の日持っていきました。
家内はそれを病室に掲げて、毎日見ていたそうです。
これは、私にとって非常に思い出に残る言葉です。
⑥ 人間、死ぬこと以外軽傷だと思え
これまた強烈な言葉ですが、実はこれはアメリカで最も有名な日本人の一人であるロッキー青木氏の言葉です。
ロッキー青木氏は、世界的なレストランチェーン「BENIHANA」のオーナーとして有名な方でしたが、数年前に亡くなりました。
実は、私の息子が一六歳で渡米する時、人の紹介で東京に来ているロッキー青木氏に会いました。
私は息子を紹介して、
「うちの息子はロッキーさんと同じようにアメリカに行って活躍したいと言っています。ぜひよろしくご指導ください」
と話しました。
ロッキー氏はレスリングの日本代表として渡米し、無一文から世界的な実業家となり、事業のほかにも気球やパワーボートの世界チャンピオンとして冒険を繰り返していました。
私の最も尊敬する人物です。
その時に、ロッキーさんはうちの息子に色紙を書いてくれました。
「箱田君へ 人間 死ぬこと以外 軽傷だ」
彼はパワーボートや気球の冒険で生死の境までいくような大事故に何度も遭ったそうです。
あと一歩で死ぬという状況から生還した時、
「人間は死ぬこと以外は軽傷と思えばいいんだ。生きていること自体ありがたいことだ。小さなことにクヨクヨしたり、あの人がこう言ったから許せないというようなつまらないことにこだわらないことにしよう。俺は生きているんだ。チャレンジだ」
という気持ちになり、ずっと生きてきたそうです。
⑦ できない自分に腹を立てろ
私は、若いころから坐禅の修行をしています。
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その関係で営業担当者の禅寺研修を担当したことが何度もあります。
京都の心華寺の斯波最誠という和尚さんのもとで、営業担当者と坐禅をしながら営業の勉強をする研修会でした。
その時にいただいた言葉が、「できない自分に腹を立てろ」でした。
私たちは自分が失敗すると、「相手のせいでこうなった」「会社の方針が悪い」「こんな高いものは売れるわけがない」と、周りの環境のせいにしてしまいがちです。
うまくいったときは、「俺が頑張ったからうまくいったんだ」「自分の努力のせいだ」と考えたりします。
失敗したら他人のせい、成功すれば全部自分のせいというのは、おかしいと思いませんか。
失敗するのもうまくいくのも全部自分に原因があるのです。
ですから、うまくいかなかった時に「あいつのせいでうまくいかなかった」と腹を立てないことです。
「自分の力が不足していたんだ」「俺の努力が足りなかった」と、自分自身にうまくいかない原因を求めていく生き方がいいのではないでしょうか。
「自分ができなかったのだから、できなかった自分が悪い」と思うのが本当は当然なのでしょうが、とかく人のせいにしてしまいがちです。
あれこれ言いわけをする前に、できなかった自分に腹を立てる、そして今度は絶対成功するぞという気持ちで生きるべきでしょう。
⑧ 今頑張らずに、いつ頑張りますか
これも、私の禅の師匠、菅原義道老師の言葉です。
禅で「即今当処」という言葉があります。「今ここで」という意味です。
つまり、時間という感覚をとらえたとき、昨日や過去はないのです。
「昨日頑張れ」と言ってもでき得ないことです。
では「明日頑張れ」と言ったら、明日はありますか。ある? では、出してみてください。出せないでしょう。
明日は存在しません。明日になったら今日になります。だから、明日も頑張れないのです。
今日がいっぱい集まったのを人生と言いますから、結局、今日を最高に生きるほかありません。
「今日」とはいったい何か。この瞬間がいっぱい集まっているものを「今日」と言うのです。
ということは、禅の考え方に従えば、時間というのはこの瞬間しかないのです。
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今から一秒前、二秒前も、もうすでに過去になっています。過去は絶対に変えられません。将来も未知です。
そうなると、真実の瞬間というのは今しかありません。だから、今ここで頑張るという考え方で生きたとき、人生はすべてよくなるということです。
ですから、私の師匠はよくお説教の最中に、
「今やらずにいつやりますか」
「ここでやらずにどこでやりますか」
「あなたがやらずに誰がやりますか」
と言っていました。
ある時、師匠が弟子たちに言いました。
「君たちは夜寝る時、なんと言って寝る?」
「『そろそろ寝るか』と言って寝ます」
「そうだね。『そろそろ寝るか』と言って寝た時、明日、目が覚めるという保証はあるか。ないだろう。夜中に心臓麻痺を起こすかもしれないし、大地震が来るかもしれない。もしかしたら明日、死んでいるかもしれない。ということは、『そろそろ寝るか』ということは、『そろそろ死ぬか』と同じだよ。そういう状況に俺たちはあるんだ。いつ死んでもいい、そういう心づもりで生きなければいけない。それには、今この瞬間を最高に生きることだよ」
と話されていたのを思い出します。
⑨ 人生はなんでも可能、打つ手は無限だ
富士山に登ろうとするとき、須走口や御殿場口など登り口がたくさんあります。
登り方にもいろいろあります。歩いて、あるいは五合目まで車で行く、途中まで馬で行くことも可能かもしれません。
でも、頂上は一つです。
人生も同じですね。人生や仕事で成功したいという目標を持ったとき、その手法、方法は無限にあるわけです。
一つの方法がだめだからといって諦める必要はないのです。だめなら、別の方法をやればいい。失敗したら、また別の方法をやります。
ある時、有名な松下電器(現パナソニック)の創業者、松下幸之助氏に、
「松下さんは何をやっても成功するすばらしい経営者ですね」
とある人が言ったら、松下氏は、
「何をやっても成功するなんてとんでもない。私ほど失敗の多い男はいませんでした。ただ、私は成功するまでやめなかったんです」
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と言ったそうです。
これはまさに成功理論です。
私はこれを「セチヤ理論」と名づけました。セ=成功するまで、チ=違う方法で、ヤ=やり続ける、というものです。
あなたも、一回や二回失敗しても諦める必要はありません。
成功するまでやればいいという気持ちでやり続けてください。
⑩ 物事はよくなると思えば必ずよくなる
これは、いわゆる肯定思考の考え方です。
たとえば、「これは高いから売れない」「あの上司は俺をばかにしているから嫌いだ」「俺は学歴がないから出世できない」などと、私たちはいろいろ否定的に考えてしまいます。
なんと日本人のビジネスパースンは、平均して一日二二回ぐらい「やってられない」「無理だ」「できるわけない」「アホらしい」「あいつは俺をばかにしている」と、否定的なことを言うそうです。
これからはゼロにしてください。そういう否定語やだめ言葉を徹底的に排除することです。
言葉が現実をつくってしまいます。「だめだ、だめだ」と言っていればだめになりますし、「この商品は高いから売れない」と思っている人にその商品は売れません。
結局、すべてを肯定的に考える習慣をつけねばなりません。
私はサーフィンが趣味で、何年か前にサーフボードが体に当たってあばらにひびが入ったことがありました。
とても痛くて大きな声を出すと響きます。声が出せないから、これではしばらく講演も研修もできないなと大変弱りました。
特効薬もなく、あばらのひびは時間がたってくっつくのを待つしかないわけです。その間、痛くて講演できない、まずいなと思っていました。
そうしたら、妻が、
「あなた、よかったと思いなさい」
「え?」
「あばらにひびが入っただけですんだのでしょう。首の骨が折れて車椅子になっちゃうとか、頭の骨が折れて死んじゃうとか、そういうことじゃなかったんでしょう。二週間もすれば治っちゃうと先生がおっしゃったじゃないですか。よかったと思えばいいのよ」
「そうだな」
と私もふと気付きました。
そうだ、よかったと思えばいいんだ。これで二週間、好きな本が読める、勉強できる、
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ゆっくり休める、そう前向きにとらえようと思いました。
ですから、あなたも、どんなことがあっても「これから必ずうまくいく」「必ず好転していく」「絶対によくなっていくんだ」という思いを持ってください。
そう思えば、実際によくなるという方向に必ず向いていくはずです。
⑪ 本来、他人を変えることはできない
自分を変えることはできる
自分が変われば他人も将来も変わる
これも、実は私の禅の師匠、菅原義道老師の言葉です。
もともとお釈迦様がこれに似たことを言ったそうです。
「過去と他人は変えられない。自分が変われば他人も将来も変わる」ということです。
たしかにそうでしょう。他人を変えようとすれば思うようにいかないから、ますます悩みが深くなります。過去は絶対に変えることができないでしょう。
でも、自分が変われば他人も変わります。この人いい人だなと思うと以心伝心で、「あなたっていい人ね」と返って来るわけです。
ですから、自分も変われば相手も変わってしまうということに気付いたときに、常に他人の反応も変わってくるということです。
私が新入社員として会社に入った当時、気が弱くて口ベタでしたから、成績はビリに近いほうでした。
結果的に、上司から毎日怒られていました。
「箱田、もっとちゃんとやれ。しっかりしろ。もっと頑張らなきゃだめだ」
とお説教を受けて、毎日、いやな気持ちで会社に行きました。
しかし、あることがキッカケで私はやる気になったことがあるのです。
それ以後、私は一生懸命働いて、成績が上がってきました。
すると、私をいじめていた上司の態度も変わったのです。
「箱田、最近すごいな。やればできるんだね」
といい感じで接してくれました。
なぜでしょうか。
私が変わったからです。私がやる気になって成績が上がったから、彼も私を認めてくれたわけです。
上司を変えようとしたのではなくて、私が変わったことで上司も私に対して変わったのでしょう。
まず、自分を変えることです。
そうすれば、他人も変わり、あなたの将来も変わっていくのです。
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⑫ 発心、決心、継続心を持て
これは、私が新入社員の時、池田という人事課長から聞いた言葉です。
新入社員として新しい門出に立った私たちに、これからの心構えとして教えてくれました。
「発心」というのは何かをしようと思いつくことです。
たとえば、何かの資格を取りたい、英語をマスターしたい、セールスで成功したいというのが発心です。
次に、「決心」。
「よし、そのために夜、英語の学校に通おう」「土・日、英語の勉強をしよう」と具体的に決心し、計画を立てるわけです。
そうしたら、「継続心」、続ける力を持ってやり遂げろということでしょう。
私たちは、ともすると三日坊主で終わりがちです。
私もそうです。
そこで、継続させるには、まず目標を明確にしろということを学びました。
目標が明確で、なおかつ、何がなんでも達成したいという思いがあれば継続できます。
先ほど述べたように、何がなんでも一年後にアメリカに行きたいと決心したときに、私も努力を継続できました。昼間働いて、夜働くという超ハードな労働でも耐えることができたわけです。
これからは家庭、仕事、自己啓発、健康、いろいろな分野で明確な目標を立ててみてください。
そして、それを絶対達成するという決心をし、継続してください。
⑬ 越えられない壁は叩き壊せ
よく「壁にぶつかった」と言います。
どんな壁でしょうか。「その壁、見せてよ」と言っても見せられないでしょう。
そもそもないのです。心の中で勝手に壁をつくって、「だめだ」「無理だ」「できるわけない」と思い込んでいるわけです。
結局、私たちは目に見えない壁があると思っているのですから、初めからないと思わなければいけないし、もしそういうものがあったとしても叩き壊すという気持ちでやるべきです。
現実に他人からの中傷、誤解、妨害あるいは事故や病気、災害のような、どうしようもない壁はあります。
でも、私の師匠に、
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「自然体でいいんだよ。起きたことをそのまま認めて、そして自分が信じる道を突っ走る。突破する気持ちで行けばいい」
と言われました。
「自然体でいい」という言葉に、たしかに何か救われるものがあると思います。
どうしても肩ひじ張って、思うようにいかないと挫折感を味わってしまいます。
私自身も、長い人生で何十回、何百回と人生の壁のようなものにぶち当たった気がします。
でも、結局「逃げられない」「前に進むほかない」といった気持ちで、うまく越えることができました。
「私の前に道はない。私の後に道はできる」
という高村光太郎の詩もあります。
目の前の壁を叩き壊すつもりで突っ走ることです。その上で人生が開けてくるはずです。
そういうあなたに部下も家族もついてくるのではないでしょうか。
⑭ 人生は一生挑戦だ
以前、日経新聞に「ゆで蛙シンドローム」という記事がありました。
鍋の中に水を張ります。
そこに一匹の蛙を入れます。
その鍋を火にかけます。三〇度、三五度……、ちょうどよくなりますと、蛙はいい湯だなと思って、鍋の中で気持ちよく泳いでいます。
四〇度では絶好調で、楽しそうに泳いでいます。四一度はちょっと熱いぐらいです。四二度は相当熱いです。
四五度、これはだめだ、もう焼け死ぬ、飛び出そうという時は、すでに焼け死んでいる。
これが、ゆで蛙シンドロームの状態で、今のサラリーマンの状態だそうです。
つまり、知らず知らずの間にリストラが近づいている、ボーッとしていちゃいけないよという意味でしょう。
気がついた時はゆで蛙になっている、リストラされているということです。
そうならないようにするには、どうすればよいのでしょうか。
結局、社会の変化、会社の変化についていくだけの自己変革が必要です。いつまでもぬるま湯に入っていると、気がついたら焼け死んで、出られなくなるわけです。
小さなことでいいですから、まず尐しチャレンジしてください。
たとえば、新しい資格を取ってみる、新しい技術を覚える、新しい分野の本を読んでみる、常に何かに挑戦すべきです。
私たちは、大人になればなるほど新しいことにチャレンジしなくなります。今までの惰
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性や固定観念、先入観、思い込みで生きています。
それでは全く成長がありません。
だから、思いきって新しくやってみるというチャレンジ精神を持つことです。
そうすることによって道が開けてくるわけです。
⑮ 時間は永遠に止まらない超特急だ
「時間管理」という言葉をよく聞きます。
英語で「タイムマネジメント」と言います。
でも、いったいいつの時間を管理すべきでしょうか。
「過去心不可得、現在心不可得、未来心不可得」という言葉があります。
つまり、過去の心は取り戻せないし、未来の心も現在ありません。
では、現在の心はどうでしょうか。それもとらえることができないという意味です。
たしかに、時間を見た時に、過去は永遠にないし、未来も永遠にない、今現在しかないと思っています。
しかし、今現在とはいったい何かということになります。
今現在も無常です。常に動いているわけです。ですから、現在という固定した時間もないということになります。
従って、時間は「今この時間」しかありません。
私は社長として、社員に、
「もっと早く、もっと早く、もっと早く」
「早くしろ、早く早く」
と、いつも叫んでいます。
もっと早くして、手だけでなく頭ももっと使えと言っています。
ピーター・ドラッカーは、仕事のできる人の条件を三つ挙げています。
① Do things faster.(仕事を早くしろ)
② Do things better.(より質の高い仕事をしろ)
③ Do the right things.(優先順位の高い仕事をしろ)
つまり、今ここで、もっと早く仕事をする、もっといい仕事をする、優先順位の高い仕事をするということです。
そういう形で時間を使った時に、あなたはできる人になるはずです。
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⑯ こだわらない、とらわれない、
偏らない、大きな心を持とう
私は二九歳の時に、菅原義道老師のもとで坐禅修行を始めました。
当時、私は外資系の会社の営業課長をやっていました。
営業課長として考えていたことは、朝から晩まで、売上げ、売上げ、売上げ、売上げ………でした。
部下が六人ぐらいいました。朝から晩まで
「もっとちゃんとやりなさいよ」
「だめだ、こんなレポートは。書き直して」
「何度言ったらわかるの。そういう電話のかけ方はだめなんだよ」
と怒鳴りまくっていました。
その時、菅原義道老師が
「こだわるな」
と言ったのです。
「箱田君、いったい何にこだわっているんだ。あの人はこう言った、あいつは許せない、あいつはやる気がないと、周りばかり気にしているじゃないか。あの人の人生じゃないだろう。おまえの人生だろう。自分の自分になれ」
と言われました。
「自分の自分になれ。世の中にこだわるものは何もないんだよ。こだわらずに、自分の信じる道を思いきり突っ走れ。自分が正しいと思うことを全身全霊でやりなさい。そうすれば、人もついてくるんだ。おまえは小さいことにこだわりすぎている」
とお説教を受けました。
ですから、私は何か気になることがあると、「こだわっちゃいかん、こだわっちゃいかん、こだわっちゃいかん」と自分の心に言い聞かせています。
⑰ 自分の選んだ道だ
最後までやると心に決めたことだ
どんなにつらくても必ずやり遂げよう
最初の「自分の選んだ道だ」というのは、実は私の息子の言葉です。
私の息子は一六歳でアメリカに行ってしまいました。アメリカのウィスコンシン州のグランズバーグ・ハイスクールに入学するためです。
私は心配でしたから、成田空港まで送りに行った時に、
「難しいことがあったらいつでも帰ってこい。日本の高校に戻れるように、お父さんが話
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つけてやるから」
と言ったのですが、息子は、
「自分の選んだ道だから、やるっきゃないよ」
と言いました。
これはいい言葉だなと思いました。
結局、すべてのことは自分が選択したことです。
今選んだ会社、今の仕事、今いる妻や夫、今着ているもの、全部自分が選択した結果が今ここにあるわけです。
私の息子は「自分の選んだ道だから」と言って、結果的にはアメリカの高校を卒業し、アメリカの大学、大学院に行き、そして、今は大学で教授をしています。
そこで、私は息子を思い出しながら「自分の選んだ道だ」に続く言葉を書きました。
「最後までやると心に決めたことだ。どんなにつらくても必ずやり遂げよう」
アメリカの高校、大学、大学院を卒業し、博士号までとるのは結構大変なことです。
でも、私の息子は最後までやると決意してやり遂げました。
今していることはすべて自分の選んだことです。
ですから、その結果にも自分が責任を持つべきなのではないでしょうか。
⑱ 熱意にまさる才能はない
本書では繰り返し「やる気が大事だ」と言いましたが、「やる気」は別の言葉で言えば「熱意」です。
たとえば、止まっている機関車の前の線路の上にれんがを二つ置いた時、機関車は発車することができません。れんがが邪魔になって、エンジンを噴かしても走れないのです。
ところが、時速一〇〇キロで走っている機関車は、三〇センチのコンクリートの壁もぶち破ります。つまり、勢いです。これがやる気です。
勢いがあれば相当の力を発揮してしまうのです。
むしろ、才能よりも勢いであり、熱意が必要なのです。
⑲ あなたの未来は、今何をしているかで決まる
景気が悪くなると、いろいろな会社で社員をリストラします。
五〇歳を過ぎて突然会社をクビになるのは大変つらいことです。
でも、全部が全部とは言いませんが、相当程度の数の人がリストラされたのは自己責任ではないかと思われます。
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同期に入社した五〇歳の人が、一方は役員になり、一方がリストラされていくという現実を見た時に、結局、若いころに種をまいて頑張った人は役員になっており、若いころに何もしないでサボっていた人はリストラされてしまうということも、ある意味ではあり得ることです。
ですから、五年後、一〇年後という時間幅で自分の人生を見て、今何をするべきかを考えて行動すべきです。
「原因あれば結果あり」で、よい原因をつくっておきます。そうすれば、将来的によい結果が待っているということです。
中国に「先憂後楽」という言葉があります。
先につらいことをしておいて、あとで楽をしようということです。
つらいことをするのは、普通はあと回しとなります。
思いきって今のうちにやってしまうと、あとで楽になるということでしょう。
ところが、今さえよければあとはどうなってもいいという風潮もあります。
あなたは今、ここで五年後、一〇年後に役立つことをしておかねばなりません。
最後に、あなたにこの言葉をお伝えしたいと思います。
失敗しても終わりではない、
諦めた時すべてが終わる
この言葉はアメリカの元大統領リチャード・ニクソンの言葉です。
リチャード・ニクソンジョン・F・ケネディに大統領選挙で負けました。「負け犬ニクソン」と言われたそうです。
その時に言ったのがこの言葉です。
「負け犬ニクソン」と叩かれた彼が、次の選挙では再チャレンジして、勝って大統領になりました。
ですから、負けた犬でも諦めなければ勝ち犬になれるということでしょう。
大切なのは、まず最後まで続けることです。人生どんな時でも、どんな人であっても失敗することはあります。
そこで諦めたら終わりなのです